生得的・後天的な機能とReservoir computing

一つ前の記事に続いて遺伝に関係する内容です。人間の機能のうち何が遺伝子に組み込まれていて、何が学習により後天的に獲得されるものなのでしょうか。単純な物体を認識機能だけでなく、人の気持ちを読むといった高度な機能、あるいは悲しくて涙したり嬉し…

自然に多く触れることは精神疾患のリスクを減らす?

あっという間に年末も近づき、数週間後には日本に一時帰国です。東京や京都・大阪で過ごす予定ですが、毎回東京に行くと思うのが圧倒的な人の多さと建物の多さ。ロンドンも中々ですが、東京都心には敵いません。Neural correlates of individual differences…

良い音楽の秘密

この前ランチで同僚のイギリス人から 「Haruki Murakamiの小説には3ページに一度料理のシーンが出てくるがあれは何なんだ」 と聞かれました。村上春樹の読者にとっては彼の小説の主人公が定期的にパスタを作るのは自然なことであり、逆にイギリス風の冷凍食…

記憶をうまく忘れるようにする

最近Scienceに掲載された名古屋大の研究と、別のグループからCellに掲載された研究を読みました。それぞれレム睡眠とノンレム睡眠における記憶の忘却に関する研究。 REM sleep–active MCH neurons are involved in forgetting hippocampus-dependent memorie…

脳の理解と理論と仮説

以前に自分も記事を書いた論文について解説している記事が界隈で話題になっていました。プロの編集者と研究者の共同の記事で、とてもわかりやすく元論文について説明してくれています。自分でも改めて元論文を読んでみたのですが、自分が以前に読んだ時に勘…

「自由エネルギー原理は脳について何を教えてくれるのか?」

脳の統一理論?認知神経科学界隈でよく知られている理論の一つに、英国UCLのKarl Fristonが提唱している「自由エネルギー原理」というものがあります。ネットで検索すると日本語でも英語でも膨大な説明資料が出てくるわけですが、たとえば以下のようなスライ…

オックスフォードの計算論的神経科学系Podcast事情と自分の好み

オックスフォードの計算論的神経科学コミュニティで話題になるpodcast僕はこれまで神経科学や機械学習のPodcastはあまり聴いてこなかったのですが、そもそも日本語コンテンツが少ないというのもあります。ただ、英語だと面白いコンテンツがいくつかあるよう…

情報の抽象化とOFC

現実世界の情報の次元は基本的に無限大で、細かく見ればいくらでも細かく見れます。そんな状態で処理するのは人間どころか機械でも無理なので、人間も機械も、何かしらの情報の取捨削減を日常的に行っています。そうした情報の取捨削減方法には色々あり、も…

現代的な脳解析をどう勉強するか

ここ数年、脳画像業界ではデータ公開やコード共有が大きく進みました。これにはインフラの整備や数々の巨大予算がついたプロジェクト、など様々な要因が寄与していますが、データ共有が重要であるという意識の共有やデータサイエンスの大流行も大きな要因か…

脳活動エンコーディングとTikhonov回帰とリッジ回帰

最近読んだ論文の中で一番面白かったです。www.biorxiv.org

脳の感受性が高い人ほど見慣れない出来事に柔軟に対応できる?

オックスフォードの研究室で毎週やっている論文紹介が丁度自分のターンだったので、この論文を紹介しました。英語で発表するのはいつまで経っても緊張します…。 www.nature.com要約はいつもわかりやすい解説を日本語で掲載してくださっている理研の公式プレ…

Latent Factor Analysis via Dynamical Systems (LFADS)をchainerで実装した。

やったことGoogle BrainのDavid Sussilloらが先日Nature Methodsに出版したLFADSをchainerで実装しました。 GitHub - yu-takagi/chainer_lfads: Implementation of LFADS with chainer 公式の実装が既にこちらにあるのでそれを参考にしました。二つのpython…

複雑な行動系列の学習は誤差逆伝播的に行われない

来週締め切りの国際会議に提出する論文の準備が忙しすぎて完全にBlogを放置していました。目論見としてはこちらに来てからの仕事のうち2つ(それぞれ人間と動物の実験データ解析)を出す予定でした。が、動物の方の結果がまだ微妙、かつそもそも規定上二重…

人工ニューラルネットワーク(特にRNN)を脳のモデルにする時の注意

人工ニューラルネットワークと実際の脳が似ているかどうかは全く自明でなく、その問題自体を絶賛研究中、というのは何回か書いています。「似ている」という研究も確かに最近たくさん出ていますが、逆に考えるとそれだけこれまで似ていないと思われていたか…

広範な脳領域から同時記録ができる時代

Feature-Based Visual Short-Term Memory Is Widely Distributed and Hierarchically Organized https://www.cell.com/neuron/abstract/S0896-6273(18)30424-0 記憶した情報が脳の広い領域に分布していて、更にそれら領域が情報を保持している時間は領域ごと…

脳は逐次的に構文処理をしている(ACL2018ベストペーパー)

今年開催されたACL(自然言語処理の国際会議)のベストペーパーで、脳波と絡めた論文がありました。 [1806.04127] Finding Syntax in Human Encephalography with Beam Search単語を逐次的に読んでいくニューラル言語モデルによって得られる文章表現が様々なタ…

脳内テレポーテーションによる「あれを取っておけば…」

二つ以上の選択肢があって、どれか一つを選ばないといけない時、どうやら悪い方を選んでしまって「あれを取っておけば…」と思うときはよくあると思います。少なくとも僕はよくあります。この「あれを取っておけば…」という想像を脳の前帯状皮質(Anterior Ci…

聴覚野とよく似たニューラルネットワーク

以下の記事で、ニューラルネットワークの解析方法それ自体が確立していないと書きました。前頭葉を模したニューラルネットワーク - tkg日記実際それは事実なのですが、最近よくやられている手法としては、ニューラルネットワークの各層から実際の脳活動を予…

人の海馬でも記憶再生が?

自分の今いる場所を脳内で表現している"場所細胞"ですが、睡眠時や休憩時に、これまでの経路を復習する(リプレイする)ことがマウス等の実験から知られています。こうしたリプレイは記憶の定着などに役立つと考えられていますが、そうしたリプレイが人の海…

前頭葉を模したニューラルネットワーク

「そもそもニューラルネットワークは脳を模したものだろうに、何を言っているのか」という感じのタイトルですが。実際にはニューラルネットワークが脳と似ているかは殆どわかっていないので、似ていたというだけで論文になる時代です。この論文もそんな研究…

深層学習の汎化性能は各ニューロンの入力選択性にも依存する

少し前の記事(神経科学者はマイクロプロセッサを理解できるか? - tkg日記)は、古典的な神経科学の手法が(ノイズのない綺麗な大量のデータを解析に使える)マイクロプロセッサの目的すら明らかにできない、という批判的な内容でした。今回の研究はその逆で…

脳は学習の際に決められたリソースを配分している?

スポーツから座学まで、習得した課題に対して何かしらの変更が加わり、柔軟な対応を迫られることはよくあります(再学習)。そのような時、脳はどうやって対応しているのでしょうか。まず準備として、先行研究から、一見高次元な脳活動(無数にあるニューロンの…

神経科学者はマイクロプロセッサを理解できるか?

脳研究者は、人間や動物など研究対象は違えども、脳の目的、目的達成のための手法、そしてその物理的実装に多かれ少なかれ興味があると思います。そうした事柄を探りたい気持ちがある一方で、脳科学の世界はデータの量や精度の制約が厳しいことで知られてい…

脳に腸ネットワークが存在?

ここ最近読んだ二つの本*1はどちらもいわゆる"脳・腸連関"に関するトピックが重要な位置付けにありました。具体的には、我々は脳で考えてると思ってるけど、実は腸の影響もかなりあるのでは、という内容。このeLIFE誌の研究はまさにその関連です。 Stomach-b…

脳活動から言語情報を読み取る

脳から情報を読み取ることが出きれば、脳を介したコミュニケーションができるようになります。人工知能技術を用いてそうした技術を開発することがまさに僕の研究分野なわけですが、映画やアニメのようになるにはまだまだ時間がかかりそうな状況です。最大の…

状況を見極めるか、素早く適応するか。

人間は、新しい環境に放り込まれて課題に取り組むことになったとき、最初は試行錯誤の連続で失敗も多いですが、最終的にはうまく適応して課題をこなすことができます。ここで問題になるのが、環境に適応した後に環境自体が変化する可能性があることです。今…