状況を見極めるか、素早く適応するか。

人間は、新しい環境に放り込まれて課題に取り組むことになったとき、最初は試行錯誤の連続で失敗も多いですが、最終的にはうまく適応して課題をこなすことができます。ここで問題になるのが、環境に適応した後に環境自体が変化する可能性があることです。今の環境に十分適応していくことも重要ですが、環境自体が常にうつりかわる可能性があるときは、環境の変化にも反応していかないといけません。

ちょっとここまでだと抽象的すぎますが、例えば転職・就職活動で考えて見ます。ある時期はコミュニケーション能力が非常に重要視されていたためそこにあわせて能力を磨くよう適応する一方で、時代の変化とともにコミュニケーション能力よりも技術力が重要な時代になってきたとします。そのとき、その変化にあわせて鍛える能力や・アピールする能力を柔軟に切り替える能力を持つことが、就活戦線を切り抜けるためには重要です。

では「慎重に状況を見極める」戦略と「状況の変化を敏感に察知して切り替えていく」戦略、どちらの戦略をとるのが最終的に幸せになれるのでしょうか。あるいは、人間はそもそもどちらの戦略をとりがちなのでしょうか。その問題を探求したのがこの研究です。
A bias–variance trade-off governs individual differences in on-line learning in an unpredictable environment | Nature Human Behaviour

研究から得られた結果は、人によって採用する戦略は異なるけど、最終的な結果に差はない、という興味深い結果でした。理由としては、「慎重に状況を見極める」派は状況が変化した際に失敗が増え、「敏感に状況の変化に適応する」派は状況が変わってない時に失敗が増える、というトレードオフがあるから。なんだかこう書くと当然の結果っぽいですけど、実際に人間がどういう戦略をとっているかをきっちり検証した研究はこれが初めて。

さらにこの研究を一味違うものにしているのは、上記トレードオフをいわゆる機械学習モデルの「bias-varianceのトレードオフ」と同じものであり、機械学習モデルをシミュレーションすることで人間の行動をうまく説明できた、としているところ。若干無理やりな感じもするんですが、うまく普遍的な話につなげていて、話の持っていき方がうまいなと関心してしまいました。