脳の理解と理論と仮説

以前に自分も記事を書いた論文について解説している記事が界隈で話題になっていました。プロの編集者と研究者の共同の記事で、とてもわかりやすく元論文について説明してくれています。自分でも改めて元論文を読んでみたのですが、自分が以前に読んだ時に勘違いして読んでいた部分もあって、そこに気づけてよかったです(それに合わせて自分の記事も修正しました)。

rmaruy.hatenablog.com

元論文の中で、Kordingらはいくつかの処方箋を提案しています。その中には、「脳の性質や構造についての理論・理解を踏まえて解析や実験系を組み立てる」という提案もあり、これは上の記事で言っていることに近い印象があります。例えば一つ前の記事で書いたような「自由エネルギー原理」はそうした大きな理論の一つですね。Kording本人がそうした枠組みを提案する後続論文も出ていて、流行りのDeeplearningに乗っかって話を展開しています。

www.frontiersin.org

また、先日紹介した脳xAIのPodcastの直近ゲストであるKrakauerも、Kordingらの論文を引用しつつ以下のような提案をしています。
www.sciencedirect.com
神経科医としての彼の立場はタイトルではっきりと表明されていますが、要するに神経活動ではなくもっと行動を観察し、そこから理論を作り、その上で神経活動をみていこうというもの。Marrについてもたくさん触れています。本人による極めてざっくばらんな解説がPodcastで聞けるので興味があればそちらを聞くのがいいと思います。

ちなみにKordingの論文とKrakauerの論文は、以下のDeepMindのDemis Hassabisらによる論文でも並列で紹介されています。神経科学のアプローチを機械学習に取り入れる際には、仮説に基づいて注意深く設計された実験系で行うべき、という文脈です。
www.sciencedirect.com

(ところでMarrの話はこの辺の論文でも普通に出てきていますし、オックスフォードで雑談している時にも、今自分たちがどの辺の研究をしているのかという整理をするときにMarrの名前は出てきます。)

ここまで書いて、「そもそも仮説無しに実験・解析するなんてありえるのか」という、より本質的な問いに関する以下のGershmanによるスレッドを思い出しました。バイアス無しにデータから"発見"することはありえないだろうという話ですが、それは確かにその通りといった感じ。