精神疾患を生物学的に再定義

現状の精神疾患の診断には多くの問題がありますが、そのうちの一つが生物学的な指標が存在しないことです。多くの精神疾患は脳の病気と考えられていますが、現状、どんな脳検査も(あるいは血液検査も)、うつ病双極性障害かを判別することはできません。なので、患者本人が散発的に語る症状から診断を確定することになります。似たような症状を生じさせる疾患は多く、医師の経験によるものを除いても、誤診が構造的に生じやすい状況にあります。また、各疾患や症状には、経験的に効くことがわかっている薬が多数存在する一方で、それらの薬が効く生物学的な仕組みはわかっておらず、個人差が非常に大きいのも問題です。そのため総当たり的かつ対処両方的に薬が投薬されている状況です。

…とまあこんな状況のため、生物学的に精神疾患を定義する研究は非常に重要性が高いと考えられており、下のScience誌に掲載された論文もその一つ。複数の疾患患者の死後脳を用いて各疾患の患者同士の遺伝子情報を比較しています。
science.sciencemag.org

多数の知見が報告されていますが、たとえば、臨床的には似ていると思われていたいくつかの疾患が、遺伝的には似ておらず、その一方で関係が薄いと思われていた疾患同士が遺伝的に極めてよく似ている、などといった結果が得られたようです。僕は遺伝学のことは素人なので詳しい部分はわからないですが、データ数がそれほど多くなく、遺伝子同士の相関を見ているだけで予測的な解析はしていないため、実際にどの程度の効果があるのかは今後の研究次第といった印象です。ただ、こうした方向性自体は正しいと思いますし、今後も研究は加速していくのではないでしょうか。