B4/M1で認知神経科学の研究室にこれから入る人のための教材?


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タイトルの質問に答えることが難しい理由は二つありまして、第一に認知神経科学分野の研究が広大かつ多様なのと、事前知識の個人差が大きいことがあるかと思います。


第一の点について、当分野の研究には、サルやマウスの実験を積み重ねるものもあれば、ヒトの大規模データに機械学習を適用するようなものもあり、はたまた実験をせずに理論とシミュレーションだけのものもあります。第二の点について、東大で学部三年から計算論的神経科学の輪講をしていましたという人もいれば、自分のように文系社会人出身かつ修士入学時点でプログラミング経験がなく心理学/神経科学/機械学習/確率統計のどの知識もほぼゼロの人間もいるので、それぞれに勧めるべき本は全く異なります。


などといきなり言い訳から始まりますが、そう言っていても仕方がないので以下、上記のスペックだった自分が今修士に戻って似たような分野に取り組むならこういうのをやる、というのを列挙します。ですのでチョイスには偏りがあります。


ちなみに自分が修士に入学した2013年度当時はPRML、Theoretical Neuroscience、Sutton強化学習、の3冊をまず輪講でやりました。(今はなきNAIST松本研にも所属して大量の勉強会に参加していたこともあり)かなり苦労した記憶がありますが、それぞれ今でも悪くないチョイスだと思います。反省点としては、計算論に偏りすぎているので、もう少し認知科学(心理学)よりの知識を幅広く入れておけばよかったと思っています。言語や意思決定、視覚、聴覚、などなどサブ分野によって全く違う一方でシステムとしてはそれらが繋がって人間は動いているので、きちんと概観しておけばよかったです。

機械学習

パターン認識と機械学習 上
2021年になってもPRMLをお勧めしていきます。実際のところどうなんでしょうか。周りに聞いてみたらなんだかんだで今でもこれを使ってるところが多いようですが……。
わかりやすいパターン認識(第2版)
PRMLにいく前に何か挟むならこれがいいかと思います。
[第3版]Python機械学習プログラミング 達人データサイエンティストによる理論と実践 (impress top gear)
実はまだ読んだことがないのですが、機械学習応用系の研究室では導入に広く使われている本のようです。(首都大小町研がお勧めしているので間違いないと勝手に思ってます。)Pythonコードも付属しているのでColabなどを使って進めていくと良さそう。
Deep Learning
いわゆるGoodfellow本。PRMLだと深層学習の知識がカバーできないので。深層学習をかじるだけなら一つ上の本だけでも十分かも。
Reinforcement Learning, second edition: An Introduction (Adaptive Computation and Machine Learning series) (English Edition)
DQN, AlphaGo以来大流行の強化学習に興味があるならまずはこれでしょうか。

(認知)神経科学

Theoretical Neuroscience: Computational and Mathematical Modeling of Neural Systems (Computational Neuroscience Series)
2021年になってもTheoretical Neuroscienceをお勧めしていきます。国内でも海外でもまだこれを使ってるところは多いのでは。
脳を測る
ヒトの脳機能の非侵襲的測定のチュートリアル日本語論文。素晴らしく整理されています。
The Student's Guide to Cognitive Neuroscience
認知神経科学定番の教科書その1(サポートサイト: The Student's Guide to Cognitive Neuroscience)。
Cognitive Neuroscience: The Biology of the Mind
認知神経科学定番の教科書その2。
計算論的神経科学: 脳の運動制御・感覚処理機構の理論的理解へ
数式がヘビーですが、脳の計算論に興味があれば日本語で読める本としてお勧め。

機械学習(AI) + Neuroscience

humaninformationprocessing.com
認知神経科学をAIの側面から捉えて整理した大変意欲的な教科書。(認知)神経科学の教科書はどうしても事例集っぽくなり退屈なのですが、これは一本筋が通っていて面白いです。ただ、細かく丁寧な解説はないので、機械学習と神経科学の基礎を身に付けたあとじゃないと少し読むのが大変かもしれません。

統計

Statistical Thinking for the 21st Century | statsthinking21
全部Web上で公開されていて、Pythonコードも概ね付属。仮説検定からベイズ、再現性問題までカバーしているという意欲的な内容。著者自身が認知神経科学の再現性問題の大家です。
伝えるための心理統計: 効果量・信頼区間・検定力
最近のジャーナルだと効果量や信頼区間の報告はほぼ必須になっているのですが、日本語でその辺のトピックをカバーしてくれている貴重な本。

fMRIデータ解析

fMRI Bootcamp | The Center for Brains, Minds & Machines
fMRI Course - Summer 2019 — FMRIF
Principles of fMRI 1 | Coursera
海外のブートキャンプやらサマースクールやらCourseraやら。どれも自分はやってないのでどれがお勧めとか言えないのですが、とりあえずどれか一つやって、あとは研究室の実データで解析に慣れていくのがいいかも。
2021年大阪大学集中講義 – Yamashita Okito‘s Web Page
日本語での数少ない資料で質が高いです。誰かの解説なしだと少し辛いかも。

神経生理データ解析

github.com
https://www.funjournal.org/wp-content/uploads/2021/01/june-19-94.pdf
Allen Instituteが公開している神経生理データで実践的に神経生理データ解析を学べるようです。


以上ですが、総じてデータ解析の部分は手法もソフトウェアも日進月歩なので、まずは研究室の先輩に聞くのが一番かもしれません。身も蓋もないですが。